わたしは普段1時間のタイマーをかけたラジオを聴きながら眠りに入るのだが、眠りが浅いので、1〜2時間で目を覚ます。
他人とひとつのベッドで寝ることはない。
他人の波動を感じてしまうので、一緒には眠れないのだ。
1月8日未明。気がつくと、ラジオのタイマーが切れている。習慣でラジオの電源を入れると、5秒くらいで切れる。再び電源を入れる。また、5秒くらいで電源が切れる。電池は2日前に交換したばかりだ。
10年以上使っている安物のラジオなので、寿命が来たのかと諦めて、眠りに入りかけた。
そのとき、衣擦れのような音がして、誰かがベッドに入ってきた。
わたしはいつも右肩を下にして横寝している。
その背中の方に誰かが入ってきた。
耳元ではっきりと女性に囁かれた。
「いつもと逆やね。ごめんね、音させちゃって。じゃあね」
わたしは寝返りを打ったが誰もいない。
時計を見ると2時10分。
丑三つ時である。
丑三つ時といえば怖いものとしてとらえられる印象が強いが、
諸仏成道の時間であるとも言われる。
この出来事で目が覚めた。
再びラジオの電源を入れると、ラジオは音を出し始めた。
わたしは、いったい、誰が来たのだろうと考えていた。
別れた女性は多すぎる。
「いつもと逆やね」
とはどういう意味だろう。
しかし、思い当たることがある。
3日ほど前に、わたしはある女性が亡くなった夢を見ている。
だが、耳元で鮮明に聞こえた声は彼女の声とは少し違う。
ラジオは鳴り続けていた。
そして、わたしは過去のことを考えつづけていた。
ラジオが語る。
「3時をお報せします」
時報が、プップップッと鳴り、正時のプーを告げずに電源が切れた。
思ってみれば、幸せな出来事だった。
わたしのベッドに入ってきたのが誰なのかは定かではないが、
わたしが別れてきた女性の一人が、わたしのことを想ってくれていた、慕ってくれていた、信頼してくれていた・・。
そのことはとてもありがたいことだ。
また、肉体を離れた魂というのは、幸せそうな声をわたしに聞かせてくれた。
ほんとに、ありがとう。
遠くない将来、誰かの訃報をわたしが知ることになるだろう。