山極壽一氏。元京都大学総長。
東京都出身の人類学者、霊長類学者にして、ゴリラ研究の第一人者である。京都大学理学研究科教授を経て、京都大学総長に就任し、2020年9月30日をもって、任期を終え、退任した。日本学術会議では「安全保障と学術に関する検討委員会」委員を務めており、会長にも就任した。

ラジオで山極氏の話を聞いたことがある。頭が切れるし、行動力がある。素晴らしい方だと思った。そこで、彼が出演したラジオ番組を途中から書き起こした。

「や:」は山極氏。
「あ:」はアナウンサー。


や:人間を知るために,人間以外の動物を研究するという方法論を知ったわけですね。
あ:最初はサルなんですね?
や:そうです。ドクターの2年まで、私はニホンザルの研究をしていました。北は下北から、南は屋久島まで。ニホンザルの分布域の全域をまわって、ニホンザルっていうのはどういう生き物なんだろう、そういうのをずっと、すでに研究している人たちや、地元の人たちに聞きながら歩き回りましたね。
あ:人間にいちばん近い動物は、チンパンジーですよね。
や:うん。
あ:それが何故ゴリラになったんですか。
や:それはね、ニホンザルはやはり人間から遠すぎるなぁっていう気がしてて、チンパンジーは動物園で見ても、なんか人間に近いけれど、人間より劣っている面もあるなぁと思ったんですね、
で、こういうこと言っちゃうと、チンパンジーの研究者に失礼だけど、ゴリラに会った時は、そんな気がしなかった。つまり、人間よりも高貴な、人間がとても叶わない面を持っているなぁと思ったんですね。だから、そういう動物を研究してみたいなぁと思ったんですね。
あ:なんか、動物園で見るゴリラっていうのは、たしかに、でーんとしている感じがしますよね。
や:うん、まずその、チンパンジーよりも人間よりも体がでかい。だから、身体的な比較では、ゴリラは人間に負けてない訳だよね。で、それから来るものだけじゃない威厳を持ってる。で、抑制力がある訳だよね。人間だったらイライラして、何かしちゃうところをゴリラはじっと耐えて、やらない。そういう面があるので、こういう間の随分取れた、ゆっくりした仕草っていうのはどうやって出てくるんだろうなあという気がしましたね。で、特におもしろいなぁと思ったのは「ドラミング」です。胸を叩くという行動。これは何だろうなぁと思いましたね。人間にもチンパンジーにも無いわけでしょう。こういう行動が、どうやって進化したんだろう。で、動物園ではね、群れを作っているところがほとんど無いんですよ。だから「ドラミング」っていう行動が、社会生活の中で、どういう役割を果たしているのかって分からないよね。だから、それがやっぱり、野生のゴリラを見に行かないと分からない。いろんな興味もあってね、行きました。

あ:ゴリラが棲んでいるのはアフリカですね。アフリカの、どの辺になるんですか。
や:アフリカ中央部のね、ちょうど赤道直下の熱帯降雨林ですね。高温多湿。ただ、ゴリラはチンパンジーと違うのは、非常に高い山、標高3000メートル以上の山に暮らしているんですね。そのぐらいになると、チンパンジーは棲んでいないですから。熱帯雨林の低地から高地まで、適応したのがゴリラって言えますよね。
あ:国で言いますと、何っていう国にいるんですか。
や:ゴリラは、西のゴリラと、東のゴリラに分かれていて、西は、カメルーン、ガボン、中央アフリカ、赤道、ギニア、コンゴって所に棲んでいますけども。東のゴリラは、ウガンダ、ルワンダ、コンゴ民主共和国、この3国にいますね。
あ:最初に、野生のゴリラの調査に行ったのはどこですか。
や:今、コンゴ民主共和国と呼ばれていますが、当時はザイールという国だったんですけどね、そこに行きました。
あ:それは、どんな調査隊だったんですか。
や:これはね、私ひとりで行ったんですよ。
あ:一人で、ですか。
や:うん、まだ日本人で、私の世代より前で、ゴリラを調査した人っていうと、もう、私の20年前に、調査をされた私の先生、の世代しかいなかったですから。日本人のゴリラの調査地というのは無かったんです。
あ:つまり、あまり研究している人がいなかったというわけですか、ゴリラを。
や:そうですね。未だに、あんまりいないですけどね。1950年代に、日本の調査隊、それからアメリカ、イギリスといった調査隊が集中して、マウンテンゴリラの「ヴィルンガ火山群」て所で、調査を始めましたけども。1960年に、コンゴ動乱が起こって、その後、調査が行われなかったんですね。で、その後入ったのが、1967年のアメリカ人のダイアン・フォッシー博士で、この方が、長期のフィールド調査を作った。で、それ以外の所に行こう、ってことで、私は1978年に、ひとりで、カフジ-ビエガ国立公園て所に行ったわけです。で、ここで、わたしのちょっと前に、イギリス人とドイツ人の方が、短期の調査をしてます。ただ、ゴリラを人に慣らして、直接近くで見る、という所まではいってなかったから、まだゴリラが人間を非常に敵視していた。そういう時代ですね。

あ:ゴリラの調査って、どういうふうにするんですか。
や:えーとね、昔から、ゴリラっていうのは、人にハンティングされて食べられたりしてるからね。非常に人間に強い敵意を抱いている訳です。だから、人間を見れば、すぐ逃げてしまう。あるいは、怒ってくる。その敵意を解かないといけないわけだよね。そのために「自分が敵じゃありませんよ」っていう態度をしながら、辛抱強く彼らに接近していかなくちゃいけないわけ。こちらの姿を見せて、ゴリラのような行動をして、だんだんゴリラに近づいて行って、最終的には、群れの中に入ることをゆるしてもらって、彼らといっしょに行動して、群れの一員として行動しながら、彼らの行動を観察する。これが極意ですね。
あ:ゴリラの仲間になったんですか。
や:そう、そのとおりです。
あ:怖くないですか。
や:いや、最初は怖いけども、ゴリラの気持ちが分かるようになると、むしろ全然怖くないですね。動物園のゴリラのほうが怖くなる。というのは、動物園ていうのは、鉄格子とか堀とかで、隔てられてるでしょ、だから、こ向こうもこちらも一応、安全な距離を保って付き合っているわけですよね。で、物理的な障壁があるから、相手の気持ちをあまり斟酌する必要がない、でも、野生の場合には全く障壁が無いから、言うならば、怒ればすぐ掴みかかられてしまうわけでしょ。相手の気持ちを分かりながら、心理的障壁を自動的に持つわけだよね。そのほうが安心できる。
あ:そうすると、なんとなく群れの中に「いる」っていう存在になるんですか。
や:そうです。彼らにとったら、私は「取るに足らない空気のような」存在。あまり気にしていたら、彼らが自然な行動ができないわけでしょ。だから私は、なるべくお邪魔しないように、居候みたいな形でいる、っていうのが、理想的だね。

あ:私だったら「私は敵じゃないよ。何もしないからね」って会話しながらいくんですけども。どういう風にして近づいて行くんですか。
や:あのね、ゴリラには一応、礼儀があってね、近づく時は、声を出さなくちゃいけないわけね。で、その声を出しながら、お互いに距離を保ち合うんですよ。
あ:どんな声ですか。
や:「んっんーー」っていうね。これは、ダブルベルチバークって言って、これは、ダイアン・フォッシー氏が名付けたんだけども、ダブルで聞こえるゲップ音なんですよ。「ベルチ」って、ゲップって意味だからね。
あ:もう一回お願いします。
や:んっんーー
あ:音が2つあるんですか。
や:そうそう。
あ:だからダブルなのね。もぉーーって、ゲップするような感じで音を出す。これは、ゴリラってお腹が大きいからね。すごく低くて深い声が出るんですよ。メスでもね。で、わたし、あんまりお腹大きくないから、ゴリラほどね。そんな深いが出ないんですが、この深い声、重々しい声を出すのがいちばん格好良いんだよね。

あ:食べ物はどんなものを食べているんですか。
や:地域によって違うんですけどね、ゴリラがいちばん好きなのは、甘いフルーツ。これが好きなんだけど、わたしがそもそも最初に逢ったゴリラ達って、山の上に棲んでいたから、あんまりフルーツが無いわけですね。そうすると、葉っぱとか樹皮ね、樹の皮。それから、根っことか枝とか、そういうものを食べますね。
あ:やまぎわさんも食べていましたか。
や:僕は、ゴリラが食べるものは、ひととおり食べていました。
あ:ひととおり・・
や:一応試してみて。その、ゴリラというのは、どういうものか知ろうとしたわけですから。
あ:木の実でしたら、美味しいものもあるんじゃないですか。
や:いや、もう、甘くてね、すごく美味しいものが沢山ありますよ。

あ:寝る時はどうするんですか、ゴリラは。
や:これもね、場所によって違うんだけれども。東のほうの、山の上のほうにいるゴリラはね、地上にベッドを作るんですね。で、木の草を、ちょうど座布団状に集めて、その上に、ぐんぐんと体重をかけて、押し固めて、その上に寝る。それから、低地のほうのゴリラはね、地面が湿っていたり、雨が多かったりするので、木の上にベッドを作ることが多いですね。で、その場合は、枝を折り畳んで、他の木から枝を取ってきて、プラットホームを作って、鳥の大きな巣のような形にして寝るんですね。
あ:やまぎわさんも同じようにして寝たんですか。
や:いえ、木の上は…。ただね、昼間見つけると、そこに彼らのベッドの上に寝てみると、非常に頑丈に作られているから “これは結構安眠出来るな”という気はしましたけどね。

あ:ゴリラって、何頭くらいで群れを作っているんですか。
や:平均10頭です。
あ:10頭。
や:いちばん大きな群れで、これまで報告されているのは60頭以上っていうのがあるんだけどね、それは非常に稀で、だいたい、1頭のオスと数頭のメスと、その子どもたち。で、10頭前後になるんだよね。
あ:我々、どちらかというと、ゴリラは怖い動物というイメージがあるんですけれども。山際さんは「心優しい進化の隣人」とおっしゃっているんですけども、これはどういうことなんですか。
や:あのね、最初にゴリラを見た時にね、胸を叩く「ドラミング」という行動が不思議だなぁと思ったんだけど、実は、野生のゴリラを見に行ってみると、”これは、とても誤解されていたなぁ” ということが分かったんですね。ゴリラって1846年に、ヨーロッパ人によって発見されて、その後、ヨーロッパの動物園に少しづつアフリカから、ゴリラが連れて行かれるようになったんだけど、最初アフリカで見つかった時に、まぁ、見つけたのは探検家で、銃を持っているから、やっぱりね、ゴリラは敵視して胸を叩いたわけです。で、これを探検家は、「ゴリラの威嚇」であって「戦争の宣言である」というふうに解釈して、鉄砲を撃ったわけだよね。ところが、それは大きな誤解だったわけ。

ゴリラが胸を叩く「ドラミング」という行動は「自己主張」であって、「闘わずにお互い引き分けましょう」っていう提案なんですよ。


あ:ええーー
や:そうなんです。それをね、みんなすごく誤解してたわけなんです。そのために、ヨーロッパやアメリカにゴリラが送られるようになっても「非常に凶暴で戦争好きな動物」というレッテルを貼られてね、動物園で飼育された。だから非常に過酷な状況で、動物園に飼われているということになるね。
あ:わたしなんか、「キングコング」のイメージですけどね。
や:「キングコング」は、まさにね、その誤解の賜物で、キングコングって、美しい金髪の女性を生け贄にして、その前で、こぶしで胸を叩いて・・ あれ、こぶしで胸を叩くというのも誤解なんだよね。
ゴリラはこぶしで叩きません。手のひらで胸を叩くんです。ちょうど、その、オスゴリラが息を吸って胸を太鼓のように張らすと、大胸筋の下に大きな袋があって、息を吸い込むと、太鼓の皮のようにピンと張るんです。それをポンポンポンと叩くと、いい音がするんです。それが「ドラミング」なんですよ。それをこぶしで叩くより、手のひらで叩くほうがいい音がするに決まってるでしょ。実際に、野生のゴリラを見てみると、こぶしではなくて、手のひらで叩いてます。
あ:怒っていることは怒っているんですか。
や:「自己主張」ですから。
あ:「自己主張」ですか。
や:我々がね、自分を主張する時に、肩を張ったり、いきって見せる。たとえば、歌舞伎の役者が見栄を切る、これといっしょなんですよ。あれ、肩をいからせて、いかにも強そうに見せる、それを「怒っている」というふうに誤解したんだな。だから、本当にゴリラが攻撃したいんだったら、ドラミングなんかせずにそのまま飛びかかって来ますよ。
あ:そうですね。
や:そんなまどろっこしい事やってたら、ボーンと鉄砲で撃たれてしまうし、ゴリラ同士だって、向こうに跳びかかられてしまいますよね。実際に僕も、ゴリラ同士の喧嘩を見たことがあるけど、そんな時はドラミングしません。両方、どーんと組み合って、お互いの頭や肩を噛み合うんですね、血みどろになりますけど。ドラミングなんかしている余裕は無いです。

あ:ドラミングした時は、結局その後どうなるんですか。
や:ドラミングをし合って、で、お互い接触せずに、お互いが納得すれば引き分けていく。お互いが離れあって行く。で、その時にたとえば、オス同士だと、そのトラブルの原因になるメスがね、すっと移っちゃったりすると、オスが闘わざるを得なくなるわけだよな、実際に。
あ:原因はメスってことが、よくあるんですか。
や:まぁメスの場合はね。でも、メスが原因ではなくて、単に集団が近づき合っただけだったら、その「ドラミング」をするだけで、集団は離れていきますね。
あ:じゃあ、闘わないんですね。
や:闘わないです。
あ:闘うことは、すごく珍しいです。で、闘う時は必ずといっていいほど、メスが原因ですね、オスが闘う時。しかも「ドラミング」ってね、別にオスの専売特許じゃないんだよね。子どももドラミングするし。メスもドラミングするし。あんまりいい音がしないけどね。だから、ドラミングっていうのは、別に、双方に自己主張するだけじゃなくて、遊びの場合も使うし、相手に対して自分の気持ちを伝えたい時にもドラミングするし、いろいろあるんですね。
あ:たとえばオス同士がドラミングをし合った時に、周りはどうしてるんですか。
や:周りは見てますよ。あるいは、子どもたちは、オスに合わせてドラミングしたりする。だから、それが危険じゃないってことをみんな知ってるんですよね。
あ:どうなって収束するんですか。
や:オス同士がドラミングしますよね。「ディスプレイ」って言ってね、辺りを走り回って、木をへし折ったりなんかして、お互い自己主張し合う。それは我々がドアを蹴ったりするようなもんです。何分かそのようなことをやると、お互いメンツを保って、別れていく。

だから、ゴリラの社会っていうのは、双方がメンツを保つことが非常に重要なのね。勝ち負けを決めない。それを、人間は誤解しているわけだ。我々、人間ていうのはね、やっぱり、トラブルがあって、両方が力をぶつかり合わせると、勝ち負けを決めようとするでしょ。ゴリラって、そうでなくて、勝ち負けをあえて決めずに、お互いがメンツを大事にして引き分ける。

そのメンツを認め合うのに、ちょっと時間がかかる。で「お互いに力を見せ合う」必要があるわけです。それは、お互いが「力を見せ合う」だけじゃなくて、周囲の者にも分かってもらうようなかたちをとるわけです。だから、派手なんです。メスや子どもたちが、自分の集団のリーダーが、立派じゃないと納得しないじゃないですか。メスは離れちゃうかもしれないよね。そのために「俺はえらいんだぞ」ってやるわけですよね。それがドラミング。

あ:周りは止めないんですか。
や:止めます。止めないと、彼ら同士だと喧嘩になっちゃうじゃないですか。だから、彼らよりも力の弱い者が介入して「引き分ける提案」をするわけですね。そうすると自分たちは、メンツをもって別れられる。もし、それがね、彼らよりも力の強い者が介入した場合には、彼らはメンツを保てないわけですよね。要するに、力の強い者に屈伏して、不満足だけど別れさせられた、ってことになるじゃないですか
あ:なるほど。
や:力の弱い者が仲裁に入れば、彼ら自身がメンツをもって引き分けられるわけだよね。そういうふうに、ゴリラの社会はできているわけ。
あ:なんか、賢い感じがしてきました。
や:非常に賢いですよ。
あ:えぇ。
や:だから “人間よりも、ずっと上品な社会だ” って、僕は思うんですよね。
あ:仲裁に入る時に、どういう事をするんですか。
や:あのね、相手の顔を見つめる、ということをしますね。実際に、手で引き分けたりとかはしないです。真ん中に、ズッと入って来て、そして顔をじーっと見つめて、顔を近づけていくんですね。
あ:どれくらい近づけるんですか。
や:僕もね、された事があるんで。
あ:あるんですか。
や:あります、あります。
あ:どのくらいまで来たんですか。顔が。
や:20センチくらいまで来ますね。

あ:おぉーー。
や:見つめられた時はね、私は、意味が分からなかったのね。何故かって言うと、私は、それまでニホンザルの研究をしていましたから、ニホンザルは「相手の顔を見つめる」ということは「威嚇」なんですね。
あ:よく、サル山に行きますと「サルの目を見ないでください」と書いてありますね。
や:そうそう、まぁ、要するに「ガンをつける」んですね。で、弱いほうは、けっして、見つめられたら相手の顔を見返したらいけないわけです。相手の顔を見返すと「挑戦した」と受け取られて攻撃される。だから、目を伏せる。あるいは、大仰に、歯をむきだして、言うなら「人間の笑い」みたいな顔をしてですね、自分が相手よりも弱いことを示す。
あ:媚びるんですか。
や:そう。だからニホンザルの社会っていうのは、ゴリラの社会と全く違って、あらかじめ勝ち負けを決めて、喧嘩を防ぐってことをやっているわけですよ。
あ:上下関係がはっきりしているというわけですか。
や:そうそう、だって、喧嘩も最初から勝負が決まってれば、何もする必要が無いわけです。
ニホンザルにとって、喧嘩っていうのは、優先権を侵害しないためにするものだからね。だから、餌は強い者が独占するわけです。弱いほうが手を出せない。それによって喧嘩を防いでいるわけですよ。
あ:封建的ですけれども、それで秩序を保っているわけですね、サルは。

や:そのとおりです。でも、ゴリラはあえて、そういう勝負をつけないんです。「強い」「弱い」を決せずに、共存しようとする。だからメンツを保つ必要があるし、第三者が喧嘩に介入する必要があるんですよ。
あ:なんで見つめ合うんですか。
や:これもね、要するに、対等性を担保しているんだと思うんですね。つまり「強い」「弱い」じゃなくて、お互いの感情をうまく合わせて、すり合わせて一体化する、そして相手を操作しようとしてる。相手の言うことを聞く、そういう事だと思いますね。だから、僕は、それで非常に学んだことがあって、相手と顔と顔とを合わせる行動というのは、人間にも受け継がれているなぁと。私たちは、毎日毎日いろんな人と顔を合わせることが多いわけです。その時に、顔を背けて “私は貴方より弱いですよ” って、ニホンザルじたいな表情をしなくても済むわけでしょ。それは、顔と顔とを合わせる事が、私たちの日常生活にとても必要だから、やっているわけです。ただし、顔と顔とを合わせるのに、そんなに近づかないですよね。何故かっていうと、私たちは言葉でコミュニケーションを取っているからね。でも、言葉っていうのは、わたしたちが、わずか数万年前に獲得した行動なんです。それまでの何百万年間は、言葉無しにコミュニケーションを取っていたわけ。ということは、おそらく、ゴリラみたいに、顔と顔とを合わせて、もっと顔を近づけ合わせるということを、大事なコミュニケーションにしていたかもしれないよね。何故ならば人間と人間とで、顔をゴリラぐらい近づけて、コミュニケーションを取る場合があるんですよ。どういう場合だと思います?
あ:恋人同士、か、親子。
や:うん、お母さんと赤ちゃんだよね。お母さんと赤ちゃんていうのは、赤ちゃんは言葉を話せないから、言葉を使わずにコミュニケーションを取っているわけですね。恋人同士も、もう、言葉はいらない。だから、顔と顔とを合わせることができる。それは、相手と一体化して、相手を操作しようっていうコミュニケーションだと、僕は思うのね。それは、言葉の前に、人間が、たぶん、対応していたコミュニケーションじゃないのかな。それが何につながるのか、って言ったら「共感」につながるわけですよ。つまり「相手のことを自分が思いやる」、「相手と自分とで、心を合わせて、何かする」っていうことにつながっているんだと思いますね。

あ:ゴリラは優しい生き物だなぁと思った出来事、あるいは、直接ご覧になった事ってありますか。
や:うん、ゴリラってね、やっぱり、仲間の痛みをよく分かるわけだよね。仲間が今、どういう状況に置かれていて、自分が力を貸さなければ、仲間はとても困るという事が分かる、それが「共感」なんですよね。

たとえば、ワナに捕まってしまった子どもゴリラを、大きなオスがね、丁寧にワナを弛めてはずして助けてやる、とか。あるいは、子どもが危険にさらされている、というのを、体をはって守る、とか。それから最近で言えばね、右腕を肘から失ってしまった子どもがいたんだけども、母親もいなくなってしまったんで、その子が、なかなか群れについて歩けない。それを、みんながね、大きなオスだけじゃなくて、みんなが優しく見守りながら、その子どもに歩調を合わせて、ずうっと誘導していく、っていうことを見た事あるんですけども、そういう「思いやり」ってのは、なかなか他の動物に無いですよね。

あ:そういう「思いやり」、人間だけかと思っていたんですけど、ゴリラにもあるんですね。
や:そうですね。むしろ、人間は、今、それを失いつつある。

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書き起こしの前半はここまで。

ゴリラに真の共存のあり方を学ぶ気がする。
わたしたちは、この世の生き物を観察することで、得るものが沢山あるということだ。
次回、後編を書き起こします。

https://bottomx.shibugaki.jp/?p=6556

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