September 2018  |  01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30

キャンプの想い出

昭和の時代に今のようなしゃれたデザインのコテージがあるキャンプ場などなかった。

中学生の頃、夏休みがくると仲のいい友達で川にキャン プに行った。女の子5人男の子5人くらいだったと思う。キャンプに行くにはテントが要る。あの頃は貸しテント屋さんがいくつかあって、夏休み前にテントを 借りる予約を入れて、当日テントと飯盒を借り、バスに乗って川原でキャンプを張った。必要なものはみんなで持ち寄ったが、その中にフォークギターがあっ た。日の高いうちは川で泳ぎ、日が傾いてくるとカレーライスを作り、夜になればキャンプファイヤーを囲んでギターを弾き、歌を歌った。なぜか、人気があっ たのが、「戦争を知らない子どもたち」ジローズの曲。



中学校3年の時だったろうか。キャンプファイヤーの火も消し、みんなテントで眠る頃、わたしは一人の女の子と河原で並んで寝転び、満天の星を見上げていた。流れ星がいくつもいくつも空を横切っていく。

深夜になり、二人でトイレに行ったとき、(当時のキャンプ場のトイレというのは肥溜めの上に板を張り、四方を見えないように囲んだだけのものだった)わたしは、一本の木に無数の霊魂を見た。大きな木の幹に、まさに恨めしい表情の人の顔が十、二十と張り付いているのである。これは女の子も一緒に見たので私の錯 覚ではないと思う。

怖いね、怖かったね、と言いながら私たちは河原に戻り、興奮した心を冷ましながら満天の星のささやきを聞き続けた。相変わらず時々流れ星が次々と黒い空を裂いていく。夜空は私だった。二人で手をつないで寝転び、寝転んだ背中が河原の石で痛くなれば起きて膝を組み、何も話さなかったのか、ずーっと語り合っていたのか、わたしには記憶がない。 しかし満天の星はまぎれもなく私だった。そして山際が白み始め、一夜の青い夢が終わった。

今、思う。
あれは本当の出来事だったのだろうかと。
手をつないでいたのは誰だったのだろうと。
 

comments

   
pagetop