虎

人にとって自尊心ほど厄介なものはない

人にとって自尊心ほど厄介なものはない。李徴は、才ある若者だった。潔くないことを恥とした。しかし、心に猛獣を飼っていた。臆病な自尊心と、尊大な羞恥心。 そして李徴は自ら虎と化した。 虎と化すことを潔しとしたのか、それしか道はなかったのか・・。わたしは虎と化した李徴と会ってみたい。 そう思うのだ。

神様だけがご存じの『なぜ?』

世界とはな、自己が時間と空間との間に投射した幻(まぼろし)じゃ。自己が死ねば世界は消滅しますわい。自己が死んでも世界が残るなどとは、俗も俗、はなはだしい謬見(びゅうけん)じゃ。世界が消えても、正体の判(わか)らぬ・この不思議な自己というやつこそ、依然として続くじゃろうよ。