ベッドの中で意識が起き上がる。
目を閉じていると、ここが何処だか分からない。
音を探ってみる。誰かが歩く音がする。
だれだ・・。それが分からない。
それにしても、一体、今はいつなのだ。鼓膜を振動させる誰かが歩く音は、50年ほど前に聞いた音だ。
自分の年齢など考えようとも思わないが、とても昔の気配がする。
ここは何処なのだ。分からない。
目を閉じたまま、いろいろな記憶をたぐり寄せてみる。
出会った人、亡くなった人、色々なことを思い出す。
砂時計の砂が遡り、吸い上げられるように記憶が積み上がっていく。
それにしてもここは何処なのだ。わたしは何処で意識を取り戻したのだろう。
さらに今は一体何時なのだ。それも分からない。
もし今、目を開けてみれば、いろんな事が分かるのかもしれないが、わたしは目を閉じたまま考えている。
ベッドから降りてどちらへ行けば玄関があるのか・・分からない。
ここは何という街なのか、それも分からない。
さうして色々な記憶に、推理を重ねているうちに、時には納得し、時には答えを得られないまま、目をそつと開ける。
「ああ。そうか」
一年のうち半分くらいはこうして意識を取り戻す。
時刻は決まっていないのだけれど。
