近時,不況の中,競輪に限らず公営ギャンブル全体の売上が落ち込んでいる。競輪場に足を運ぶと,観客の老齢化が進んでいることに驚く。カーキ色の防寒具を着た高齢の方がマークシートを一生懸命に塗りつぶして数百円の車券を購入している。しかし,それを受け取る窓口の女性職員は受け取った用紙を機械に突っ込んで,老人が差し出した小銭と照らし合わせるだけである。機械化による恩恵は従業員だけが受けることが出来るものだったのか・・。車券を受け取った老人は寒風が吹き抜けるバンクの金網に向かって歩を進めていく。鉄火場では銭を吐き 出す側が神様ではなかったのか。その公営ギャンブルが売上と入場客の減少で困っているという。さもありなんである。

公営ギャンブルの運営について一言。公営ギャンブルのスポーツとしての醍醐味や,配当金の魅力で客を呼べる時代は既に終わっている。公営ギャンブルは施設自体を一大エンターテイメント施設にするべきである。いくつかの都市がカジノ計画を打ち出している今日である。宿泊施設に始まり,温泉,レストラン,カジノ,シネコン,マッサージ,エステ,美容院,ブランドショップ,などを完備し,銭を吐き出して帰る客が満足感を抱いたまま帰途につくことの出来る施設作りと経営がなされなければ,公営ギャンブルは衰退の一途をたどるだろう。勿論その根本にはサービス業としての従業員の自覚が必須であることは言うまでもない。

繁盛しているパチンコ屋に行ってみると,店員は誠に礼儀正しく,店内は綺麗であり,一声掛ければミニスカートのお姉さんがコーヒーを運んできてくれる。老舗のソープランドに行けば,男性店員が土下座で迎えてくれ,時間待ちの間は熱いお茶をすすりながら備え付けのタバコを吹かし,自宅よりも大きな画面のテレビを眺めていれば,やがて女の子がこれまた楚々とした笑顔で迎えにきてくれる。こうなれば,もはや銭金の問題ではなくなる。男の理性などたわいもないものだ。

いっそのこと,競輪・競馬・競艇なんという枠も外してしまえばどうだ。「エンターテイメントプラザ鉄火場」である。DEEPなディズニーランドだ。この施設は全て博打に興味のない方々も利用できるのが大前提だ。もちろん入場料などというものは取らない。地下1階に24時間営業のカジノ、地下2〜5階までを駐車場にし、1階はエントランスと美術館、喫茶店、中庭に自然庭園を造り、循環式の小川まで施工する。完全な人口自然を実現し たこの庭園では初夏にもなると源氏蛍が乱舞する。2階はショッピング街にレストラン、エステや、美容院などもここに完備する。欲にまみれた頭脳をリフレッシュするために、そして一般の方がいつでも利用できるために、こうした施設が不可欠だ。3階に屋内競輪場を設置、4階はシネコン、5階以上は宿泊施設と温泉だ。もちろん誰でも利用できる。博打好きのサラリーマンの出張にはうってつけだ。建物の南側には競馬場がそのターフを輝かせ,コース脇には10台の風力発電機。この発電機で施設の電力を賄う。東の入り江では競艇レースが行われ、モンキーターンに歓声を上げる。夕刻からは屋内のバンクでナイター車券をひねる。疲れれば温泉で身体を癒し,自分の部屋で仮眠を貪る。深夜の目覚めには,ルームサービスを頼み,スクランブルエッグとサラダにフランスパンを付けて貰い,大企業が作るマーガリンにはご遠慮願い,帝国ホテルのピーナッツクリームを注文する。コーヒーはハワイコナか、ビターなエスプレッソ。健康マニアの方は青汁も添えてもらえばいい。ベッド脇のPHSを使えばデリバリーヘルスも呼べるが、博打に女は禁物か。プラズマテレビをつければ,競輪競馬競艇の出目予想,そしてルーレット,ブラックジャック,麻雀,バカラなどの実況中継。見ているうちに博徒の虫が蠢き出す。時間の感覚など既に麻痺しているであろう。部屋のシャワーを頭からかぶり、気付けにコロンをふりかけ、ドアを開けて廊下に出たときには既に肩で風を切らんかなの気迫に満ちあふれている。

愉しいかな。愉しからんや。

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