熱燗の匂いがする大晦日の夕餉

いつもと同じ夕食。箸を手に取ると、熱燗の匂いがする。わたしは一滴の酒も飲まない。しかし、あからさまに熱燗の匂いがするのだ。

父親が亡くなって、9年を越えた。
未だに動いている父親の時計。
入院中に兄が買ったものだ。
電池交換などしたことはない。
でも、動いている。


今年の冬はわたしの体調が悪く墓参りにいけなかった。
思いを綴った。

「海鳴りに立ち尽くしている父母の墓
合わせた手をもて寒風を斬る」

と。
父親の墓は海辺にある。

わたしの家の夕飯におせち料理などない。
わたしは正月が嫌いだ。
多数と同じ行動を取ることに嫌悪を覚える。

いつもと同じ夕食。
箸を手に取ると、熱燗の匂いがする。
わたしは一滴の酒も飲まない。
しかし、あからさまに熱燗の匂いがするのだ。

父親が座っているのだと感じた。
これは間違いない。

わたしの右隣に父親が座っていて熱燗を呑んでいた。

寒い大晦日。
熱燗で暖まってくれればいい。

今度、墓まで行くからな。

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